zazou

朝いちばんのお客さまでした。

「ガーリックパンはありますか？」

ちょっとお待ちくださいね、と
急いで仕上げをお願いして焼き上げてもらった
ガーリックバターブレッド。



実は今日、娘がやっと普通の食事ができる日なんです。
ずっと入院してて、やっと大きな手術が終わって。

思わず袋に入れる手がとまった。

今日、食事制限がとれて、娘に何が食べたい？って聞くと
こちらのこのパンって言って。

その場にいた店長と私はいろんな感情が湧いてきて

そうなんですか。
ほんとに光栄で嬉しいです。
と言うのだけで精一杯。

これ以上何か言うと泣きそうになったから。

袋を受け取ったお客さまは、

ずっと入院してから決めてたみたいですよ。
手術のあとは、ぜったいzazouのパンを食べるって。
ありがとう、喜びますよ。

と笑顔で帰っていかれました。

ずしーんときました。
二人、しばし無言のまま。
これは、明日の朝礼でまっ先に伝えなきゃね、と店長。

苦しい闘病生活を乗り越えた先のごほうびに
zazouのパンを選んでくださったお嬢さん。

素直に嬉しい。

その気持ちと共に、浮かんできたことは

長いつらい闘病生活のあとの
最初の一口になる、
これはいわば、聖なるパン。

果たして私たちは、こんな熱い想いに応えられるような
パンを作っているのだろうか。

いつ選んでもらっても恥ずかしくない
堂々と実印を押せるようなパンを。

こんな、自問する機会を作ってくれた出来事に
ただ、ただ感謝。

翌日の朝礼では、シェフをはじめ、
みんな感動と誇りと責任感に包まれた
忘れられない朝になったのでした。